「馬場の外周を回りたいのに、馬がどんどん内側に入ってしまう…」
そんな経験はありませんか? 特に駈歩や速歩の最中に、**自分では真っ直ぐ行っているつもりなのに、気づけば馬が勝手に内側へ…**という場面は、乗馬を始めて間もない方にとって大きな壁です。
この記事では、馬が内回りしてしまう理由と、それを防ぐ正しい乗り方・意識すべきポイントを、実践的な観点から詳しく解説します。
なぜ馬は内回りしてしまうのか?
内回りとは、「馬が勝手に馬場の内側へ向かってしまう」現象を指します。
これは単なる気まぐれではなく、騎乗者の姿勢・扶助(指示)・バランスの結果として起こるものです。
原因① 騎乗者の内方重心
馬は非常に敏感な動物で、乗り手の重心のズレをすぐに察知します。
上半身や骨盤が内側に傾いていると、馬は「内側に行きなさい」という信号として受け取ります。
- 肩が内側に入りすぎていませんか?
- 腰がずれていませんか?
- 外方脚に力が入っていない状態になっていませんか?
自覚がなくても、無意識のうちにこれらが原因で内回りが起きていることは非常に多いです。
原因② 扶助が不明瞭・曖昧
馬にとって、**明確な指示(扶助)**がないと、最もラクな方向に向かおうとします。
特に初級〜中級レベルでは、外方脚や手綱によるコントロールが弱く、馬が自然と内側に逃げてしまうことがあります。
原因③ 馬自身の癖・調教状態
- もともと「内回り癖」がある馬
- 馬場の傾きや、インドア馬場の角の使い方によって誘発される場合
- 運動量をセーブしようとする馬の習性(サボろうとする)
このように、馬自身のコンディションや学習履歴が影響することもあります。
内回りされないための対処法
「内回りされる」のを防ぐには、いくつかの具体的な方法があります。特に40代〜60代の騎乗者は、**体の感覚に対して「見える化・言語化」**することが有効です。
対処法① 骨盤の向きを外へ開く
馬に進行方向を正しく伝えるためには、騎乗者の骨盤と肩が常に進行方向を向いていることが必要です。
- 自分の肩が、無意識に内側を向いていないか?
- 骨盤が馬の動きと連動しているか?
まずは常歩でしっかりと確認し、意識的に姿勢を調整してみましょう。
対処法② 外方脚を正しく使う
外方脚(馬の外側の脚)は、馬の「壁」や「支え」の役割を果たします。
この脚のプレッシャーが弱いと、馬は「外に壁がない」と判断して、内側へ逃げてしまいます。
- 外方脚の位置は、腹帯の少し後ろ
- 軽くプレッシャーをかけ続ける(強く蹴る必要はない)
「壁を作る」というイメージで、外方脚を継続的に使う意識を持ちましょう。
対処法③ 進行方向に向かって視線を保つ
意外と見落とされがちなのが、視線のコントロール。
人間の体は、目線に引っ張られるように動くため、視線が内側を向いていると、骨盤や肩も同じく内に引っ張られていきます。
- 目線は「進行方向+数メートル先」を見る
- 内側の障害物や他の馬に目を奪われすぎない
よくあるパターン別のアドバイス
直線で内回りされる場合
これは特に手綱の長さが左右で違っていることが原因になりやすいです。
- 手綱を持ち直し、左右対称にしてから再出発
- 外方の脚でラインをキープする意識を持つ
コーナーで内に逃げられる場合
これは外方脚のプレッシャーが弱い状態。コーナーに入る直前で、外方脚を「押し返す」ようにして支えることがポイントです。
また、コーナー前に準備の意識を持ちましょう。
「直前に外に壁を作る → 曲がる → 抜ける」という流れを体で覚えることで、馬の動きを先読みできるようになります。
駈歩中に内回りされる場合
駈歩では特に、外方姿勢と脚が崩れがちになります。
- 外方の腰を少し前に出すような意識でバランスを取る
- 駈歩のリズムに乗りつつ、しっかりと外側をサポート
この段階で「騎座の安定」が非常に大切になります。
練習方法:内回りされにくい乗り方を体に染み込ませる
- 常歩→速歩→常歩とリズムを変えながら、骨盤・肩・目線・脚の位置を反復確認
- 馬場の四隅で一旦停止し、自分の姿勢を「静止状態でチェック」するクセをつける
- 外周の4分の1ごとにインストラクターにチェックしてもらう方法もおすすめ
まとめ|「馬が悪い」のではなく「指示があいまい」なだけ
馬が内回りするのは、「ラクをしているから」「性格が悪いから」ではありません。
乗り手の姿勢と指示が、意図せず「内側へ行きなさい」と伝えてしまっているだけなのです。
- 骨盤の向き
- 外方脚の意識
- 視線の置き方
- 手綱のバランス
- コーナーでの準備動作
これらを総合的に見直すことで、内回りのクセは必ず改善できます。
特に40代〜60代から乗馬を始めた方は、「理論と感覚を一致させること」が上達の近道。
焦らず、少しずつ丁寧に感覚を掴んでいきましょう。
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